AIエディタへ映像をアップロードする前にNDAを確認する
AIエディタへの映像アップロードは、第三者への開示に当たる場合があります。クライアントとの契約で確認すべき点と、ローカル中心の編集がリスクをどう変えるかを解説します。
以前はほとんどの編集者が考えなかった問いを、今ではほぼすべての案件で考える必要があります。
映像はどこへ送られますか?
20年間、答えは単純でした。映像はドライブに入り、NLEで編集され、ファイルとして出力されます。意味のあるコピーは自分で作ったものだけ。契約で触れる必要がないほど、当たり前のことでした。
その前提は、いつの間にか成り立たなくなっていました。
誰も告げないうちに、標準は変わった
過去2年で広まったAI動画ツールの多くはクラウドサービスです。設計への批判ではなく、動作の説明です。
ファイルを選ぶとアップロードされ、相手のインフラで解析され、結果が返ってきます。
これは、文字起こし中心のエディタ、自動切り抜きツール、ブラウザー型エディタに当てはまります。さらに、アプリ自体はローカルで動いていても、AI機能がメディアを添えてリモートのエンドポイントを呼び出すデスクトップソフトの追加機能にも広がっています。
ユーザーから見えるのは進捗バーですが、法的に起きているのは第三者への開示です。
この2つは同じではなく、その間の隔たりに問題があります。
契約書に書かれ始めていること
多くの編集者より先に気付いたのは、法律の専門家でした。
法律事務所は現在、機密資料をAIサービスへアップロードすると既存の秘密保持契約に違反する可能性があると、日常的に助言しています。情報が第三者のシステムで処理され、保存、国外への移転、保持が行われる場合があるためです。Stephenson Harwoodの機密情報、NDA、AIに関する解説も、この点を明確に指摘しています。多くの秘密保持条項は、AIプラットフォームへの入力が開示に当たるかを想定する前に書かれており、通常、その例外は設けていません。
その影響は、秘密保持契約の見直しにも現れています。CartaのNDAにおけるAI条項に関するガイダンスは、現在広く採用されている書き方を反映しています。事前の書面による同意なしに、いずれの当事者も機密情報を生成AIや機械学習システムへ入力してはならない、と明記するものです。
誰かのために編集をしているなら、こうした条項を目にするようになるでしょう。すでに見かけた方もいるはずです。
条項は編集者が考えるより広範な場合が多いため、よく読んでください。一般に、次の内容を含みます。
- メディアそのもの、
- メディアから作成された文字起こし。
- ファイル名、フォルダ構成、プロジェクトのメタデータ。
- 素材を「公開」するツールだけでなく、「処理」するあらゆるツール。
最後の点は見落とされがちです。字幕だけを生成するツールも、素材を処理しています。
忘れられがちなメタデータ
動画そのものが送られなくても、その周辺情報は送られることがあります。
プロジェクト名、クライアント名、カメラカードのフォルダー構成、ACME_Q3_LAYOFFS_CEO_TAKE4.movのようなファイル名。
メディアには慎重でも、メタデータを気軽に扱えば、ストーリーは漏れてしまいます。仕事の種類によっては、ファイル名そのものが機密情報です。
どのツールでも明示的に確認すべき点です。「動画をアップロードするか」だけでなく、「何を、いつ送信するか」を確認してください。
実際に問題になる場面
これは一部の心配性の人だけの理論上の懸念ではなく、一般的な仕事で日常的に求められる条件です。
未公開の製品。発売前に撮影したハードウェア、包装、UI、価格、画面録画に映るロードマップの資料など。
社内コミュニケーション。全社会議の録画、組織再編の発表、研修資料、インシデントの振り返り。
クライアント・制作会社の案件。映像の所有者ではなく、所有者が第三者による処理に同意していない場合。
研究とインタビュー。参加者が同意した特定の用途に、サービス提供者のサーバー利用が含まれていない場合。
法務・医療・規制対象のコンテンツ。制約が好みではなく、法律によるものである場合です。
大手スタジオはすでに対応を進め、公開前のコンテンツにオンプレミスやローカル処理のツールを求める傾向が強まっています。ほかの業界は数年遅れてスタジオのセキュリティ慣行を取り入れることが多く、今回だけが例外になる明確な理由はありません。
問われるのは、サービス提供者を信頼できるかではなく、クライアントに代わってその判断をする権利があったかです。
「暗号化されている」は別の話
各社のセキュリティページはおおむね正確ですが、知りたい問いより狭い範囲に答えている場合があります。
通信中と保存時の暗号化は、サービス提供者以外の第三者から素材を守ります。しかし、提供者への開示がそもそも許可されていたかとは別の問題です。
同様に、「お客様のデータで学習しない」という約束には、確かな意味があります。ただし、それは特定の利用方法についての約束です。企業の方針は変わる可能性があり、買収先に引き継がれることもあり、その約束によってアップロードが契約上さかのぼって許可されるわけではありません。
どちらの説明も完全に正しく、それでも論点から外れていることがあります。
役立つ問いは、もっと具体的です。
- メディアがこのMacの外へ送られることはありますか?
- 送信する場合、どの操作で送信されますか?
- その操作を行わなくても、中心となる作業を進められますか?
- 境界は画面でわかりますか?サポート記事を読まないとわかりませんか?
これらの問いに明確に答えられるツールなら、適切に処理していても仕組みが見えないツールより、クライアントに説明しやすくなります。
ローカルは、もう遅い選択肢ではない
クラウドAIが標準になったのは、しばらくの間、それしか実用的に動かなかったからです。役立つモデルの実行には、多くの人が持っていないハードウェアが必要でした。
2026年のMacでは、もはやそうではありません。
Appleシリコンは、音声・映像モデルを制作に十分な速さで動かせます。MLXを使うWhisper系の文字起こしなら、M4クラスで1時間のインタビューを数分でデバイス内処理できます。映像タグ、意味検索、字幕生成、場面説明もローカルで実用的に動きます。
選択の条件は実際に変わりました。ローカル解析は、プライバシーのために受け入れる妥協ではありません。映像を理解する多くの作業で、アップロードが不要なぶん、単純に速い方法になっています。
欲しい12秒を見つけるために、3時間のProResをインターネットで2往復させる必要はありません。
利点と制約を率直に考える
ローカル中心でも、何も外に出ないという意味ではありません。
外部サービスが本当に必要な作業もあります。存在しないショットの生成には生成プロバイダーが必要ですし、複雑な指示は最先端のモデルの方がローカルモデルよりうまく考えられる場合があります。その能力を否定しても役には立ちません。
重要なのは、境界を越えることが自分の判断なのか、初期設定なのかという違いです。
自分で決めるとは、プロバイダーを選び、送信内容を把握し、権利のある案件で使い、断っても編集を続けられることです。
初期設定がそうなっている場合、アプリを開いて映像を読み込むだけで、映像は別の場所に置かれます。
この分野にも適切に設計されたツールはあります。たとえばJumperは映像をローカルに保ち、エージェントへメタデータだけを渡します。評価すべき点です。すべてが不用意なのではなく、マーケティング上の分類より実際の動作で各ツールを判断してください。
次の案件の前に確認すること
派手ではありませんが、多くの場面に役立つ短いチェックリストです。
- AIによる処理が許されるか、クライアントに直接確認し、書面で回答をもらいましょう。プロジェクトの後より前に話しておくほうが、はるかに負担が少なくなります。
- 秘密保持条項で「人工知能」「機械学習」「第三者の処理事業者」「自動処理」といった文言を確認してください。
- 使用する各ツールで、どの機能がメディアを送信し、文字起こしも含まれるかを確認してください。
- メタデータやファイル名が、メディアとは別に送られるかを確認します。
- 機密性の高いプロジェクトには、ローカルで一連の作業が完結するツールを使いましょう。外部機能を断っても、作業そのものを諦めずに済みます。
- 何をしたか記録しておきましょう。必要になるのは、誰も覚えていない1年後かもしれません。
法律家になる必要はありません。どのツールがアップロードするかを把握し、説明できればよいのです。
AVEの位置付け
AVEは、ローカル中心のMac用AI動画エディタです。この境界を制約として後から説明するのではなく、設計の出発点にしています。
プロジェクトファイル、読み込んだメディア、文字起こし、映像解析、タイムライン処理、書き出しはMac内で行われます。Local AIエンジンと初期解析モデルがアプリに含まれるため、外部サービスに接続する前から映像の理解機能を利用できます。外部アシスタント、APIプロバイダー、生成サービスは、適したプロジェクトで必要に応じて接続するものです。
設計上の考え方はこれに尽きます。外部AIが悪いのではなく、自分で有効にするものであるべきです。無効にし忘れた結果として使われるべきではありません。
ローカルファーストのワークフローの定義、セキュリティとダウンロードの詳細、Descriptのようなクラウド文字起こしエディタとの違いをご覧いただけます。
次のプロジェクトが、こうした技術の登場前に締結されたNDAの対象なら、安全なのは従来どおりに考えることです。映像は、自分が置いた場所に残します。